完璧執事の甘い罠



恐怖に、押しつぶされそうになったその時、扉の向こうでガチャガチャと音が聞こえる。
誰か、来てくれたの・・・?



涙でぐしゃぐしゃであろう顔をあげると、キィィと音を立てながら扉が開いていく。
外の光が差し込んで、暗闇から抜け出すことができた。



「ひな様!」




切羽詰まったような声、それはジルのもの。
いつだって私を助けに来てくれる声は、ジルなんだ。


そのことが素直に嬉しいと思ってしまう。



「ひな様!大丈夫ですか!?」

「・・・ジル」



私の身体を抱きかかえ慌てたように外に連れ出してくれる。
身体にブランケットを巻き付け、暖めるように擦ってくれる。
温もりが身体を包み込んで、恐怖心は一瞬で消え去った。


身を預けるようにして目を閉じる。




「すぐに暖かいお風呂の準備をいたします」

「いいから、もう少しこうしていて・・・」

「・・・かしこまりました」




少しでも甘えていたくて。
なにも、考えたくはなくて。


ジルは、そんな私の心中を知ってか知らずか、私の言うとおりにずっと私の身体をさすり続けてくれた。