完璧執事の甘い罠



でも、あんなの・・・、ただの八つ当たりだ。
ジルはただ自分の仕事を懸命にしているだけ。
私の気持ちなんて、知らないのだから。


きっと呆れてる。
また我儘を言い出したって。
きっと困らせた。



「・・・あとで、謝らなきゃ」



でも、なんと言って謝ればいいのだろう。
いつも完璧なジルに、完璧でいてほしくないなんて、きっと理解してもらえない。

でも、ジルなら私の願いを聞き届けてくれようとするのかな。
キスの時みたいに。


でも、それって結局は仕事だからってことで。
主である私の命令だからってことで・・・。


考えたら、あのキスだって私の命令だからしてくれたんだって思うと、ものすごく悲しくなった。


命令なら、なんでもするのかな。




自分で考えて自分で落ち込んでたら世話ないよ。
はぁ、と深いため息を吐いて思考を止めた。


ふと、いったいここはどこなのだと足を止めた。
今までに来たことのない場所だ。

他人には何度かすれ違ったような気はするけど、必死だったから覚えていない。
何度も階段を下りたから、もしかしたらはじめてくる地下通路なのかも。