「私の世話、もうしてくれなくていい」
「なにをおっしゃるのですか」
「別に、頼んでいないでしょ!仕事でいやいや側にいてくれなくていいよ!」
私は怒鳴りつけるように叫ぶと、ジルを残して部屋を飛び出した。
背中でジルが私を呼ぶ声が聞こえたのにも構わず。
だって、無性に腹が立った。
私の事は仕事だと切り捨てるくせに。
お母さんの写真は、あんな風に大事そうに持っていて。
よく見ればかなり年季の入ったような、綺麗に保存はされていたけど何度も手にして見ていたことがわかる程度には汚れていて。
どれだけ見返していたか、手に取るようにわかる。
察してしまう。
どれ程、ジルが大切にしていたか。
そんなジルが、私の事は仕事だって言い切ることが悲しくて悔しくて。
私、お母さんに嫉妬してる。
狡いって思ってる。
こんな事、思いたくないのに。
闇雲に走って、城内のどこにいるのか見当もつかない場所をとぼとぼと歩く。
どこまで来てしまったんだろう。
闇雲に走ったおかげで、ジルから逃げ切れたらしい。


