「いえ。執事たるもの、主の前で気を緩めるなどあってはならないこと。城の中でうたた寝など・・・以ての外なのです」
「前でって・・・、別に目の前であからさまに寝たわけじゃなくて、私がたまたま通りかかっただけ」
「それでもです」
なにを言っても聞き入れず、決めつけたようにそう言われる。
あくまでも、私に対しては執事として関わるって宣言されているようなもの。
それは、至極当然のことで。
そのことが不満に思うのは、私が特別な感情をジルに抱いているからであって。
私自身の問題。
「じゃあ、私の前ではジルは、いつだって完璧な執事でいるってこと?」
「それが、理想的です」
「私の世話をしてくれるのは、ジルが執事で、仕事だから?」
「ひな様のお世話を私が任されていますので、責任があります」
任されていなければ。
執事ではなければ、私の事なんてどうでもいいのだと言われているみたいで。
仕事でしかないのだと、切り捨てられたような気持ちで。
「じゃあ、いい」
「はい?」