私は一度、部屋に戻ると前にジルが掛けてくれたブランケットを持ってくる。
ジルの身体にかけようと広げると、ふとジルが何かを手にしていることに気づいた。



それはなにやら写真のようで、シワになってはいけないとそっと手から抜き取った。
別に見ようと思ったわけじゃない。
本当に、純粋に大切な物のように思えたから。


でも、その選択を私はすぐに後悔してしまった。




「え・・・これ・・・」




この世界の写真はモノクロなんだ、と思うと同時にそこに映る姿に見覚えがあることにハッとした。



だってそれは、私もよく知っていて、私の大切な大好きな人だから。





「お母さん・・・」



そう。お母さん。
私の知る姿よりも少し若めの、あの肖像画のような綺麗なドレスに身を包んだお母さんの姿。




「・・・アリスさま・・・」




溢れるように紡がれた名前。
ジルを見ると眠っているまま。



気づいてしまった。
気づきたくなかった。



ジルの好きな人って・・・。





私の、お母さんだったの・・・?