結局、聞きたかったことはうやむやのまま終わってしまった。
ジルが所用で席を外したすきに私は部屋を抜け出し城内を歩く。


ジルに見つかったら怒られるだろうけど。
あの事件から、ジルは少し過保護気味だ。



ここに来る間にもたくさんの使用人の人たちとすれ違った。
私を見ると皆笑顔で挨拶をしてくれるけれど、その心のうちはどう思っているんだろうと不安になる。


偶然知ってしまったあの事件の首謀者の二人。
あの二人と同じような考えの人が他にもいたとしたら・・・。




疑いはじめたら、キリがないけれど。
頑張ろうとは決めたけれど、不安がないわけじゃない。





「このバカ!こんなところにいたのか」

「っ!?な、なにっ」



ぬっとあらわれた騎士姿のノエルに、ビクッと身体を揺らす。
突然びっくりするじゃないの。




「やけにお前の目撃情報を耳にするからもしやと思って追って来たが、なに一人でほっつき歩いてんだ、バカ」

「ば、馬鹿って!ひどくない!?」

「ひどくねぇ!お前、前あったこと忘れたわけじゃないだろ!」




怒号に近いくらいの迫力で怒鳴られる。
肩を竦め、ノエルを見ると表情はすっかり般若のごとく怒っていて。