完璧執事の甘い罠



「ごめん、ジル。ちょっとお手洗いにいってから執務室に向かってもいい?」



食事を終え、ずっと側にいてくれたジルに一言添え私はお手洗いに向かった。
駆け込むように個室に入ると、こみ上げてきた吐き気を全て吐き出す。


さっき、食べたものが、全て吐き出されてしまった。




「・・・ぅ・・・」



なにか食べなきゃと思った。
食べてしまえば何とかなるだろうと。



でも。
身体はそれを受け付けなかった。
拒むようにこみ上げてきた吐き気に抗えず。

残ったのは胸の中に残る不快感。




頑張りたいのに。
頑張って、頑張って、嫌なことも全部忘れてしまいたい。


ジルやノエルのあんな悲しげな顔もう見たくない。



だから、もっとしっかりしなくちゃ。
きっと、私が姫である以上。
こういうことはまた起こるかもしれない。


危険な目に遭うことだって辛い思いすることだって。



その度に、こんな風にどん底まで落ちていたらダメだ。
私はそれじゃあ、ダメなんだ。