｢なんで私のことそんなに知ってんの？｣



｢まだ思い出せないのか？｣



｢うん。頭の中にある記憶という記憶を引っ張り出したけど該当者はいなかった｣



再びため息つきそうになってたけど、何故かやめていた。


面倒くさい反応をされると分かっていたからだと思う。


懸命な判断である。


誘拐犯さんは呆れたような顔をしたと思えば、真剣な顔をして私を見た。



｢俺沢咲高校出身で名前は庄司 智也(しょうじ ともや)。去年同じ委員会だったんだけど覚えてないか？喋ったこともあるんだけど｣



はて……


庄司 智也なんていたっけか……



｢あ、でもそんな名前の人のおかげで庄内平野を覚えられて感動した記憶がある｣



｢それ絶対俺だわ。名前言った瞬間、庄内平野の覚え方に役立てますね！って言われた記憶あるわ｣



あの時テストでも何でもないのに何故か庄内平野を覚えようと必死だったからなぁ……


懐かしい……