…疲れた。

僕、加造 一夫は、今日遂に、高校入学後初の定期テストを終えた。

「そんな疲れることあるか?」

と僕に言うのは、中学からの親友で、同級生の神王 友礼だ。僕と友礼は共にそれぞれの第一志望高校に不合格で、滑り止めで受けた高校に通っている。だから、学力の差が激しい。

「ユーレーは天才やから、勉強せんでも点取れるんやろ?こっちは睡眠時間3時間まで削らな欠点取ってまうわ。」

「ほんまにマジメやなあ、カズは。なんで睡眠時間8時間の俺より賢くないんや。」

カズ、というのは僕のあだ名で、ユーレー、というのは友礼(とものり)の読み方が分からなくて、僕が音読みで「ゆうれい」と読んだことにちなむ。

「いやあ、ホントに時は金なりだと思うね。」

(その台詞はお前が言うものじゃない。)

僕は帰りの電車の中で、心の中でずっとそう唱えていた。