大切なもの【完結】

「翔が声かけてきたの?」


「うん!」



彩香は何も悪くないんだ。
タイミングだよ。タイミングが悪い。

なんで俺の言いたかったことを遮って翔の話なんだよ。
でもまぁ、それが翼だったらなんとも思わないんだろうな。
いくらいまは桜苗がいるって言っても元は彩香のことが好きだったんだ。そんな翔と2人になるってのが俺には耐えられない。



「…そうか」


「不安?」



彩香が俺の顔を覗き込む。

俺に近づくと今日の彩香の服だと胸元がちらついて直視できなくなる。
また、逃げ出したくなる衝動が頭によぎるけど。
それはダメだと弱い自分に自制をかける。

弱虫はさっきで卒業したんだよ。
でももう一つの自制ポイントは流石に俺も男の子だから自制できるわけもなく。



「…彩香」



ベッドにそっと彩香の体を沈める。



「郁人?」


「彩香が悪いんだよ。好きって言いたかったのに遮ってかける人の話なんかしだすから」



彩香の体に自分の顔を埋める。