「なんで知ってるの?」

「人より耳が良いから」

「それ本当?」

「俺、美衣ちゃんに嘘吐かないよ」

歯の浮くような台詞。でも、考えてみれば慧斗がわたしに嘘を吐いたことってない。

わたしはどうだろう。
慧斗に嘘を吐いたことって……。

「ただいまー」

玄関の白い柵をスライドさせながら声を出したので、ハッと我に返る。ここは慧斗の家だった。

ちょっと待って。
ということは、慧斗の両親とか……。

「今親いないから」

その言葉を聞いたのは、後ろで扉が閉まる音がしてから。

「存分に騒げるよ」

騒ぐ……?