考える間もなく、慧斗が近づいてきた。

「一緒に帰ろ」

にこにことしている。わたしは返事を探して、口を噤む。

「……わたし、今日寄るところあるから」

「うん」

「……だから一緒には帰らない」

慧斗にははっきり言うことが効果的だと、最近気づいた。わたしはしゅんとする顔を直視出来ずに、靴を履き替える。

「どこ行くの? ついてく」

「え」

「邪魔しないし話しかけないから一緒に行きたい」

そして、多分、慧斗はわたしが避け始めていることに気付いている。