彼がわたしを無視していることを、お母さんに話さなかったことには理由がある。

隣に住む彼の保身を思ったからではない。
わたしのプライドが許さなかった。

一方的に無視されて、話すどころか目も合わなくて。
それがどれだけ堪えたのか、彼は知らないだろう。


「……お母さんから聞いた」

彼の驚いた顔に心の何処かが冷えていくのを感じる。

どうせわたしに関わりたくなかったから、言わないで欲しいと言ったのだろう。

お母さんが教えてくれたのは善意からだ。わたしはそれにどうこう思うつもりも、彼の思惑に対して深く掘り下げるつもりもない。