ただお礼を言うだけなのに、どうしてわたしはこんなに校内を歩き回っているのか。

はたと気付いて立ち止まる。

彼の足音も一緒に止まった。

一階の特別教室の前。殆ど誰も通らないそこで、わたし達は向き合う。

彼のアンバーの瞳に日が差し込んで、金から緑の間の色をきらきらと変えていく。宝石のようだ。わたしは、美しいの中には強さが入っていると思っていたけれど、これは美しいものだと感じた。

「なに?」

尋ねられて、はっと我に返る。

「金曜日、助けてくれたって聞いて……」

「え」

驚いた表情をした。