立ち上がってしまった。夏菜子が少し驚いた反応をしたのが、視界の端に映る。

「ちょっと話したいことがあるんだけど」

「え?」

「ちょっと」

箸とお弁当箱をしまった。夏菜子に「ごめん、席外す」と言って教室を出た。さっきまでみんなの視線を集めていた彼だけれど、もう皆は自分のペースに戻っている。それに少しばかり安堵する。

廊下を歩いて、なるべく人がいないところ、いや少しはいた方が良いか。それってどこだろう。

宛ら告白場所を探す中学生男子のような。

彼は静かにわたしの後ろについてきている。