昼休みの教室へ入ってきたのは彼だった。クラスメートに軽く挨拶をしている。その姿を一緒に見ていた夏菜子が首を傾げた。
「手怪我してるね。なんかあったのかな?」
「本当だ」
「一緒に木登りでもした?」
「してません」
くすくすと夏菜子が笑う。朝笑われたことを思い出して、文句を言おうとした。
でも、夏菜子の視線がわたしの後ろへ向いていることに疑問を感じて、口を閉じた。それを辿る。
「あのさ、日直」
わたしのことを真っ直ぐ見ている彼がいた。
そこで視線がかち合う。
「任せて、ごめん。日誌書くよ」
「あの、」



