そんなに言うほど痛いわけでも、酷いわけでもない。ただ顔に傷が出来ることってわたしの人生でもあるかないかという感じだったから。 

「木から落ちまして……」

「木?」

「近所の木からね。ずるっと落ちて」

ぽかんと船川が口を開いているのが見えた。それから俯いて肩を震わせて笑っている。なんて奴だろう。

夏菜子はその頭を気安く叩いて、心配そうな顔をする。

「大丈夫なの?」

「平気。やった検査も大丈夫だった」

「もう、びっくりさせないでよ!」

ほっと息を吐いた夏菜子に謝る。わたしはちら、と自分の席の方を見た。未だ彼は来ていない。