みー、とか細い声がまた聞こえる。
目を懲らすと、二つの瞳がキラリと光るのが見えた。
猫か……と正体が分かってほっとする。
「下りられなくなっちゃったの?」
言葉が通じないと分かっていながら尋ねたのは、自分の心臓を落ち着けるため。
鳴き声とその大きさから、仔猫のように見える。ただ結構高いところにいるらしく、わたしが木を揺らしてもきっと落ちてはこない。
登るしかないか、と鞄を地面に置いて木に足をかける。運動神経は良くないけれど、昔はよく木に登っていた。
勿論それは幼い頃の話で、登るのにはかなり苦戦した。



