聞き捨てならない。

今の時期って春だからってこと?
鼻がよく利く時期なのか。春は花粉が酷いと聞くけれど。

「辿れる……?」

「鞄持つよ」

すっと鞄を取られて、先を歩く。勿論慧斗の帰る方向はわたしの帰る方向でもある。

その背中を追うと、パタパタと頭上が騒がしくなった。

「わ!」

「あ、ごめん」

ほら散って、と慧斗が手を振る。
パタパタと散っていく。

それが蝙蝠だと分かったのは、居なくなってからだった。

「怖かった?」

手を握られる。わたしは思わずその手を握り返した。

ちょっとだけ。