握った右手を左手で包む。
「人の体液がそんなに美味しいなら、わたしじゃなくても良いよね」
「……え?」
「それとも、簡単に食べられるって思ったの?」
アイツなら食えそう、なんて高校生男子のような思考で。
「違う違う。美衣ちゃん、こっち見て」
「……帰るから」
断言すると、本当に従順な犬のように慧斗の手はするりと離れた。
「……美衣ちゃん、ごめんね」
玄関まで来て、慧斗は呟くように謝った。
「美衣ちゃんのこと、好きだよ」
それはわたしが好きなのだろうか。
それとも、わたしの身体が好きなのだろうか。



