「ち、ちょっと待って!私、女神とかそんなんじゃないんだけど!」


「いや、お前で間違いない。」


何を根拠にしてるのか分からない


これ以上話すのも面倒くさくて私は黙って馬に乗っていた


しばらくすると賑やかな通りにでた


「……っ!」


言葉も出なかった


コンクリートのない道


市場の賑わう様子


まるで昔の西洋に似ている


ここが西洋なのかは分からないが日本でない事は間違いない


「あ、王様だ!」


私の後ろにいる男の人を見て皆が王様と言う


「…貴方、王様なの?」


「ん?まあな」


「ここはなんていう国?」


「ブリニア国」


ブリニア?そんな国聞いた事ない


「着いたぞ」


考え込んでるうちに大きな門の前に着いた



門が開き中に入ると大勢の人が、頭を下げ並んでいる


この状況に私はライアンが王様だという事に納得した


「ライアン様!一体どこに行っていたのです⁉︎お供もつけないで!」


20代半ばくらいの銀髪に灰色の目の男の人がライアンに詰め寄る



「うるさいな、イヴァンは。小姑みたいだな」


「貴方様がもう少し私の言う事を聞いてくださればこんなに………ライアン様、こちらの女性は?」


私の存在にようやく気づいたのかイヴァンは私に鋭い目を向ける


「分からないか?黒髪に黒い瞳」


「もしや、予言の女神ですか⁉︎」


出た…女神


だから女神って誰だよ


思わず心の中で突っ込む


「おぉ、女神」


「我らの女神様が現れた」


その場にいた人達が次々と女神と言い出す


「…ライアン、私女神じゃないけど?」


「まぁ、急に言われてもそうだよな。でも今日はもう遅いから明日話すから。」


「明日?」


「あぁ。」


ライアンは私を馬から降ろすと、城の中に入りある部屋の前まで連れて行った


「ここ、美月の部屋な。」


そう言って扉を開ける


中は私の家より広くて綺麗だった


「そういえば、美月はなんで森の中で倒れてたんだ?」


…森


あの時はゆっくりと考える暇がなくて気がつかなかったけど、私は海に飛び込んだはず。


浜辺にいたなら未だしも私がいたのは森の中。


私はある結論に辿り着いた。


ここは全く知らない世界であると


「…分らない。」


自殺をしようとした事は言いたくない。


「…そっか。疲れただろう?今日はもう休みな。」


「ありがとう」


「ん。おやすみ」


優しい笑顔で頭を撫でながらライアンは言った


「…何で泣いてるんだ?」


「…えっ?」


ライアンに言われて私は自分が涙を流している事に気がついた


「…わかん、ない。…ただ、嬉しくて…おやすみって言ってもらえた事が嬉しくて」


拭っても拭っても溢れてくる涙


「大丈夫、泣いていいよ」


ライアンはそっと私を抱きしめてくれた


「う、うわあぁぁぁぁぁぁ」


会ったばかり人に縋り付くように泣くなんてどうかしてる


だけど、ライアンの腕が優しくて


私はこの時わかった


ただ私は優しく抱きしめて欲しかったんだって


大丈夫だよって言ってほしかったんだって



何年ぶりだろう


久しぶりに感じる人の温もりはあまりにも心地よくて私はそのまま眠ってしまった