私もいつかそんな人と出会えるのかな。と、いうか…そうなれないかなぁ。

 春人をチラッと見て、当分無理そうだなぁと肩を落とした。

「だいたいちょっと可愛い顔を見たからって…。」

 呆れた顔をする美優に春人はムキになる。

「ギャップだよ!ギャップ!犬なんて、にらんだだけで鳴き止ませそうな杏がだぜ。」

 どこまですごいイメージなのだろう。男って本当に馬鹿…。
 でもそんなこの人に…自分こそ大馬鹿だ。

「ギャップなんて誰にでもありますって。」

 春人の思い込みをどうにかしたかった。そりゃ杏さんは確かに優しくてかっこよくて、いい人ですけど!

「なんだ。美優ちゃんにもあるのか?
 そうだな。美優ちゃんが料理上手だったら驚くかもな。」

 意地悪っぽく腕組みをして無理だと決めつけた風だ。

「そのくらい!結婚したいんですから料理はもちろんです。」

 料理が苦手と決めつけた感じが、まったく美優に興味なかったと痛いほどに分かる。

「へぇ。ただ結婚したいって言ってるだけじゃなかったんだな。
 それにしても結婚したいって言ってる割には浮いた話は聞かないな。
 毎日のように俺と昼してるようじゃ〜な。」

「結婚できれば誰でもいいわけじゃないんです。」

誰のせいでこうなってると思ってるんだか。

「へぇ〜。意外。」

「ほら。ギャップにクラッときたでしょ?」

「ハハッ。俺がクラッときても仕方ないだろ?
 …でもまぁ弁当作ってきてくれたらグラッときちゃうかもな。
 でも美優ちゃんの場合はお母さんに作ってもらって私が作りました!とか言いそうだからな〜。」

 いたずらっぽくそう言うと豪快に笑う。

 いつもこんな感じだ。私が言っていることはほとんど信じてくれないくせに、ちょっと杏さんの可愛い顔を見たからって急に好きになっちゃったりして。

 単純なのに極端なのよ。

 それに鈍い…。私がずっと好きですアピールしても、ちっとも気づかないんだから。

「そんなことしませんよ。なんなら今日仕事の後にうちに来ますか?
 目の前で見たら嘘じゃないって分かりますよね?」

「ま、まぁな。」

 自信がありそうな美優に圧倒されたようにたじろぐ。

「じゃ今日はクラッとさせちゃいますから!」

 ガッツポーズをとる美優が可愛い笑顔を見せた。

「ハハッ。よろしく頼むよ。じゃ傷心者同士、明るくいこうぜ。」

「傷心者…同士?」

「美優ちゃんも杏の連れのイケメンくんを狙ってたんだろ?
 そのくらい俺にも分かってるって。さぁ行こう行こう。」

 ど、どれだけ鈍いんだろう。まぁいっか。これも惚れた弱みよね。

 笑みを浮かべながら、待ってください!と春人に駆け寄っていった。