そうか。両方が運命と思わなきゃダメだよなぁ。

 そう思ってエルに目をやると、またエルの手が薄く透けていた。

「エル、本当に大丈夫?」

「だ、大丈夫です。」

 また手を隠すエルを見て、ただ事ではないことが分かる。

 でももしかしたら自分の運命の相手が見つかる時が近いからなのかもしれない。

 そう。エルとはそれまでの間柄なのだから。

「杏さん。運命の相手を見てみてもいいですか?」

「え?」

 いきなりの質問にびっくりする。

「だって前に僕じゃ見えないって。」

「その…。先輩に借りたんです。運命の相手が直接見られるわけじゃないんですが…。
 杏さんの小指からつながっている赤い糸をたどっていけばその相手に会うことが出来ます。」

 そうか…それでもう私の運命の相手が見つかるんだ。
 運命の相手が見つかるというのに心が晴れなかった。

「僕にはそれが精一杯で…。」と申し訳なさそうにつぶやく。

 そんなエルが可哀想に思えてつい口から出る。

「いいわよ。赤い糸があれば私にも運命の相手がいるってことでしょ?
 それが分かるだけでも十分。」

 エルを励ますようにニコッとすると手を差し出した。
 もう覚悟を決めていた。

 運命の相手をエルに見てもらえるのなら、それを受け入れよう。

「じゃいきますよ!」

 エルはテーブルの上に差し出された手をじっと見つめた。
 つられて杏もじっと見つめる。

「あ、あります。赤い糸。
 でもなんだかかすれて消えかかっているような…。」

「もう!私の運命の相手は死にかけってこと?」

 冗談っぽく笑ってエルを見るとエルの体全体がうっすら透けていた。

「え…。どうしたの?エル!ねぇ!」

 エルの体を触っても前の手のように色は戻ってこない。

 どんどん薄れていく。

「ダメですよ。杏さん。
 まだ赤い糸がどこにつながっているか見てる途中…。」

「そんなことどうでもいいの。どうしちゃったの?エル…。」

 だってまだ私に運命の人をみつけてくれてないじゃない。
 それまでは…それまでは一緒にいてくれるんでしょう?

 今にも泣き出しそうな杏にエルは観念したのか手を見ることをやめた。
 そしてだんだんと薄れていく体で話し始めた。