エルは自分の手をぎゅっと握りしめると明るい声を出した。

「さぁ。十分に杏さんを堪能したから朝ご飯にしましょっか。」

 抱きしめたまま体を起こすエルにどこまで怪力なのよ…と思っていると頭の上にチュッと音ともに何かが触れた。

「な、え…。ど…。」

 何も言葉にできない杏をベッドに残したままエルはキッチンへ行ってしまった。
 残された杏は何かが触れた頭を押さえて赤い顔をベッドにうずめた。

 少ししてから隣の部屋に行くと、すでに朝ご飯は用意されていた。

「今日は運命の人を探すために頑張りましょう!」

 顔いっぱいに笑うエルに、またズキッと胸を痛めることになった。

 それでもエルはそれが仕事だもの。と諦めて口を開く。

「でもどうやって?これだ!と思った人を言えばハートに矢を射抜いてくれるわけ?」

 だいたい前に春人のことをなんとなく話しただけで、ダメ出しをしたくせにどうやって見つけるというんだろう。

「それは…。僕らの仕事ではありませんので…。」

 そんなことを言うエルにいささか腹を立てる。

「どうして。あれ天使の恰好した子が矢を持ってるでしょ?」

「あの天使はいたずらしてるだけでして…。一方的に矢を射抜かれてしまったら、された方の身になってくださいよ。」