何度、抱きしめられても慣れないが、それでも心地よさを覚えている体は正直だった。自然と体の力を緩め、体をエルに預ける。

「最初は私も美優ちゃん守ったのよ。かっこいいでしょ。」

 自慢げに言う杏に怒って、子どもをたしなめるような声で叱る。

「もう!そういうことはしなくていいの。」

「なんでよ。美優ちゃん女の子なんだから心配でしょ?」

 なんで私が叱られなきゃいけないのよ。泣く子も黙る杏さんよ。それによく頑張ったねって褒めて欲しいくらいなのに。

 ぷりぷりする杏よりも、ずっと怒った声でまた叱った。

「杏さんだって女の子でしょ!」

 まったく。分かってないんだからと言わんばかりだ。

「女の子って…あの絡んできた人に大女だからオネエなんじゃないかって言われたわ。」

 自虐的に報告すると、エルはますます怒った口調になった。

「そんなことを!」

「いいのよ。慣れてる。」

 そうそれには慣れてる。エルに抱きしめられるよりも、大女とか男女とか…オネエはさすがに初めてだけど。

「そんなこと慣れちゃっダメ!こんなに可愛いのに…。」

 可愛いはエルの挨拶みたいなものだから置いておいたとしても、自分が悪く言われたくらいで自分以上に怒ってくれるエルに気恥ずかしいような、嬉しいような気持ちになる。

「ほら泣いてもいいんですよ。」

「泣かないわよ。」

 そんなこと言われて泣けるものじゃないわよ。それに泣くほどのことじゃないわ。でも…。

「じゃもうちょっとぎゅってしてていいですか?」

 心を読まれたのかと、ドキッとして質問する。

「どうして?」

「…僕がそうしていたいから。」

 そう言われてしまうと断れなくて回した腕をほどけないでいる。

 断れない理由を探している自分の本当の気持ちにまた気づかないふりをした。