体が痛くて目が覚めると「寒っ。」と身震いをする。

 いくら暖かい春の陽気になったとはいえ、何もかけずにフローリングで寝るには早過ぎたようだ。フローリングで寝るのにいい季節などないのだけれど。

 嫌な気分でもお腹が空いた杏は「人間だもの。」とつぶやいて冷蔵庫を開ける。
 ガランとした冷蔵庫に連日の残業で何も入っていなかったことを思い出してガッカリした。

 仕方ない。コンビニ行こうか。

 だいたい似合っていない。そう思っていたフレアスカートを脱ぐとジーンズに履き替える。

 財布を持ち、玄関の鏡でボサボサの髪を申し訳程度に整えた。遅い昼食を調達しに靴を履いた。

 ガチャリ。ドアを開けるとそこにある人影におののく。

 三角座りさながらのそれは自分よりも背が高いとは思えないほどに小さくなっていた人畜無害野郎だった。

「はぁ。何よ。まだなんか用があるの?」

 大きなため息とともに迷惑だという態度を露わにする。

「あいにく私はあんたに用はないの。コンビニに行ってる間に帰ってちょうだい。」

 寝てパワーを回復させた杏は男を見返すこともなくコンビニに向かった。