秋も深まった11月のある放課後。



俺は中学からの親友楢崎ヒカル(通称ピカル)と週4日、学校帰りに塾に通っている。

見えない、とよく言われるが実は受験生。

学校も一応進学校。

見えなくてもやる時はやる。



俺とピカルは授業前に塾のラウンジでパンとジュースで腹拵えがてら一息ついていた。

これがいつものパターンだ。





最後の一口のパンを飲み込んだ時、

やにわに女の子が

「すみません、今いいですか…?」

と声を掛けてきた。



近隣の県立高校の制服姿の、茶色い長い髪を束ねた女の子。

名前は何て言ったかな?

確か英語のクラスで一緒だったはずだ。




「あの…酒井君、ちょっと話せますか?」



彼女が言うと、俺の隣に座っているピカルが

「俺、先行ってるわ!」

と、立ち上がろうとする。



「いや、いい。」



俺はピカルの前に手を伸ばし、引き留める。



こういう時、誰かいてくれる方が都合が良い。



話が早く済むから─