ドメスティック・ラブ


「よっしーが三次会会場抑えてくれたらしいんで行く人ー?後でさとみんも顔出すって。あ、通行人の邪魔にならないように道端寄ってくれよー」

 レストランの入り口辺りで、先輩の声がする。どうやらしびれを切らして一度中に入り、よっしーに確認して来たらしい。さすがに出来る我らの代の会長はきっちりその辺も手回し済みだった。幹事は撤収作業中なのでまだ本人の姿は見えないけれど。

「しまちゃん三次会行くよね?」

「もちろん行きますよー」

 土曜日で明日の仕事を気にしなくてもいいので、何次会になろうとも最初から今日は最後まで残るつもりでいる。だからこそ我が家分の引き出物と引き菓子は、挙式の行われたホテルで既に自宅へ配送の手配を済ませてきた。

 笑いながら立ち上がると、私の意思に反してピンヒールの上に体重がきちんと乗らなかった。カクリとよろけて慌ててバランスを取るけれど、今度は頭が重くて身体が真っ直ぐ立て直せない。今日は美容院で髪を編み込んでアップにしてもらっているけれど、まさかそのせいでもあるまいし。

「ちょっと、しまちゃん?え、結構酔ってる?」

 足元がフワフワして、まるでゴム状の床の上でもあるいている様で覚束ない。膝と足首に力が入らない。座って夜風に当たっていたので少し覚めたと思っていたけれど、急に動いたせいでちょっと一気に回ったかもしれない。

「わ、危な……」

「千晶!」

 脚と背骨の力が抜けた私を間一髪の所でスーツの右腕が捕まえてくれた。左手は同様に私の膝から滑り落ちたジャケットを地面に着く直前に拾い上げている。