「あれ?浮気の人だ」




不意に声が聞こえ、あたしは飛び上がる。

そして、思わず振り返った。




「浮気の人じゃねぇな。

……浮気された人だな」




続いて鼻で笑われた。




誰?

失礼な人。




あたしは暗がりにいる彼を睨む。

普通なら、怖いとか関わりたくないとか思っただろう。

夜だし、知らない人だし。

もしかしたら、ストーカーかもしれない。

だけど、今のあたしは感覚が麻痺していた。




「うるさいな」




暗がりに向かって噛み付くように吐き出す。




「あんたに関係ないじゃん」