そのキスで、忘れさせて






藤井さんが固まるのは分かる。

だって、現れたのはTODAYの遥希だから。



だけど……





「美咲、ちょっと!」




思いっきり手を引っ張られ、廊下に出される。

扉をピシャリと閉めた瞬間に、遥希は噛み付くように言った。





「なんであいつがいるんだ?」



「え?」



「お前がF好きなのは分かるけど、なんであいつがいるんだよ!?」



「だって、藤井さんはフランス料理店のオーナーだって……」




あたしの言葉に、遥希は怪訝な顔をした。

だけど、苛ついたようにあたしに言う。




「あの男に惚れるんじゃねぇよ!」



「惚れないよ……」



「お前は俺のものだ!」





そんな焦っている遥希が可愛いと思ってしまう。

心配しなくていいのに。

あたしには、遥希しかいないんだから。