そのキスで、忘れさせて









男性は藤井賢一と名乗った。

そんな彼は、食材の詰まったエコバッグを持ったまま、リビングの入り口に立っていた。

だから、ソファへ座るよう促し、お茶を出す。

気さくな男性で、



「最上階なんですね」



とか、



「彼氏おいくつなんですか」



とか聞いてくれた。

おかげで、気まずい雰囲気にはならなかった。




そんな藤井さんは、見れば見るほど玄にそっくりだ。

だけど、話せば話すほど玄だと思えないのだった。





そんな中、急いで帰ってきた遥希がリビングの扉を開ける。




「美咲!遅くなって……




そう言って藤井さんを見た遥希は固まっていた。

藤井さんも同じく、固まっていた。