そのキスで、忘れさせて






「ごめん……美咲」




力は凄いのに、泣きそうな声で誠が言う。




「ごめん……」



「今さら謝っても、どうにもならないよ?」




あたしは意外にも冷静だった。

少し前なら、ぐらぐら気持ちが揺れていたに違いない。

でも、抱きしめられても何も思わなかった。

むしろ、遥希の顔が頭に浮かんでいた。

それほどまでに、あたしは遥希のものになっていると気付く。





「美咲がいなくなって思った。

……僕には美咲じゃなきゃ、だめだ」