奥へ引っ込んだあまりを見送りながら、成田は呟く。

「大丈夫かな? あれ」

 僕がついていこうか、と思わず呟くと、叔父は笑い、
「子どもの出勤についてく父兄が居るの?」
と言ってくる。

 あまり、子ども扱いか……と思っていると、
「ほら、一人抜ける分、ちゃんと働いて。
 今日は、沙耶ちゃんもまだ来てないし」
と言う。

 へいへい、と行きかけて戻る。

「ねえ、一人抜けたら大変になるってわかってて、なんで海里の提案引き受けたの?」

 ずっと気になっていたので訊いてみた。

 すると、次の珈琲を淹れながら、叔父は言う。

「いやあ、なんか一生懸命で可愛かったから」

「……誰が?」

 あまりか? と思っていると、
「お前の友だちがだよ」
と笑う。

 一生懸命?

 あの海里がか?

 あいつは、いつもふてぶてしい気がするんだが。

 高校三年のとき、親の仕事の都合で、イギリスに住むことになった。