目を伏せて、両手に抱える本に力がこもる。
新堂くんは視線を彷徨わせて悩ましげに口を噤んだ後、「柊」とあたしの名前を呼んだ。
「あ、えーと、あのさ、そんなに深く考えないで。
その……今月末、妹の誕生日なんだ。今までは差し障りないものを渡してきたんだけど、今年くらいちゃんと妹が喜ぶようなもの買いたくて。
でも、俺が気軽に話せるのって柊だけでさ。
2人で、って言ったのだって八神くんを連れてきてほしくなかっただけで…。
ほら、彼って柊といると柊としか話さないから、色々訊きづらいかなって思って」
「あ……」
聞いて、自然に頬が熱くなる。
いや、まあ、そうだよね。普通に考えて。
新堂くんがわざわざ日曜日をあたしと潰そうなんて、よっぽどの理由でもない限りあり得ないわけで。
…一体、何を勘違いしてたの、恥ずかしい。
「…………理彩のせいだ……っ」
ぼそりと呟いて、本を抱える手に更に力がこもる。
本、ハードカバーでよかった。
文庫本だったら、今頃ぐちゃぐちゃだわ。



