ああ…そっか、あたし、八神くんのことしか、考えてなかったんだ。
新堂くんにリレーの応援のこと聞かれた時も、借り物競走の時も、全部。
なんだ、これ。
……じゃあもう、誤魔化しきれないじゃない。
「先輩、かわいい」
「ちょっと…!そういうこと、耳元で言わないで」
彼から距離をとって、腕を離して……
彼の手を、握る。
「!せんぱ…」
「うるさい!……送って、くれるんでしょ」
軽く睨んではみるけど、きっと無駄。
だって、八神くんはニコニコと笑顔を保ったまま。
「先輩かわいい」
「っだからそういうことを…!」
「耳元じゃないのでセーフでーす」
「八神くん!!!」
まあひとつ、気づいたこと。…誤魔化しきれなくなったこと。
……あたしは、…癪だけど、
こいつのことを好きになってしまったみたいだ。