……あれ、真っ白。

目を開けた時に入ってきた一面の白に、あたしは困惑する。


ここ、…保健室?

え?えーっと…テントを抜けてから、あたし…


「あれ、先輩、目覚めました?」



「え…っ!?や、ややや八神くん…?!!」


な、なんで。どうして、ここに。

動揺してシーツをぎゅっと握りしめると、八神くんは椅子に座ったまま、あたしの手のすぐ横に、自身の手を置く。


「新堂先輩なら、『俺がいるより君がいる方が、柊も安心するから』って、帰りましたよ」

「そ、そんなこと……」


いや、あるかもしれない。
目が覚めた瞬間に新堂くんがいたら、今度こそ心臓が止まる。


と、いうか。


「八神くん…リレーは?」

「え?」


彼は一瞬きょとんとした後、「あぁ!」と合点がいったようで、軽く頷いた。


「体育祭ならもう終わっちゃいましたよ。赤組の勝ちですって」


やりましたね、先輩!と笑う八神くんの目が見れなくて、ふーん、と返しながらシーツを握る手をそっと遠ざける。



さっきまで、モヤモヤしていたくせに。

頬が、熱い。


「鞄持ってきたので、一緒に帰りましょう」


その言葉に周りを見ると、確かにベッド傍に鞄と、丁寧に折り畳まれた制服が置かれている。



「………ん、」

小さく頷いて目を伏せると、八神くんは目を細めて笑った。