途端にドキドキと鼓動が不規則になる。
……けど。
「……っ、…」
かち合ったはずの視線は、逸らされて。
八神くんの行動に深い意味がないのは、わかってる。
わかってるし、…こんなの、おかしいのに。
逸らされた瞬間から、ドクドクと心臓が脈打って、痛い。
……なに、これ。
なんだろう、この気持ちは。
あたしを一瞬だけ捉えたその瞳は、そのままゆり先生の方へと移されて。
彼は先生へと駆け寄って行く。
あたしの額から、汗が滑り落ちる。
彼のお題は何だったのか、なんて。
『好きな人』ではないのは一目瞭然だけど、
それでもあたしじゃなくて、ゆり先生が選ばれた。
……目、合ったのに。
たかが借り物競争で、こんなにも痛いのはどうして?
「バカ……。」
…そんなの、知ってるくせに。
こんなにも気が焦るのは、これまでの日々のせいだ。
忘れてたわけじゃない。むしろ、ずっと胸に刺さったまま消えなかった言葉。
『本当…ですよ』
吐かれた嘘と、偽の笑顔が、頭の中をぐちゃぐちゃにかき乱す。
気持ちが悪い。



