「おぉ〜、流石」

理彩が…というかクラスのテント全体がわーっと手を叩く。


女の子は恥ずかしそうに手を取って、よろしくお願いします、と頭を下げる。

途端にまた歓声と拍手が鳴って、やたら耳に響いた。


「…ほら、言ったじゃん。恋に時間なんて関係ないんだよ」

「……」



まるで理彩は、あたしが八神くんのことを好きみたいな口ぶりで言う。


…違うのに、上手く否定の言葉が出てこない。

ふーん、と一言だけ返すと、理彩は「えー、その反応つまんない!」と唇を尖らせて観戦に戻ってしまった。



そのうちに2走の借り物も終わって、3走の子が走る。


ぼ〜っと眺めては、熱気で運動場が揺れて見えた。
真夏くらいあるんじゃないかって暑さに、額に汗が浮かぶ。


そして、3走の子もやっぱり無理難題で。
先輩達も同学も…、頭が柔軟なのかなんなのか、よくもまあここまで変なくじを入れられるものね…。


必死になってお題のものを探す彼らに同情の苦笑が溢れる。

高校入って1年経ってないのにこれは可哀想すぎる………。



「あ、真琴。常連くんだよ、常連くん。
あの子めっちゃ足速いんだってね」

「へぇ、そうなの?」


運動神経がいいとは噂で耳にしたことはあったけど…。あの八神くんがそこまで足が速いようには…