【完】金曜日は、八神くんのモノ





熱を冷ますようにブンブンと頭を振ると、理彩が一瞬だけ、『なんだこいつ』とでも言いたげな視線を送る。

…忍者みたいな動きしてた人にだけは、思われたくない。



「そういやさぁー?」


理彩がゴクゴクと喉を鳴らして水を飲んで、またあたしを見た。


「去年もだったけど、借り物くじって生徒が考えて入れるじゃん。
だからあれなんだって。なんか、『好きな人』ってくじが2割くらいの確率で入ってるらしいよ〜」

「……へぇ」


どんだけ少女趣味なんだろうねー!とケラケラ笑う理彩に、相槌を打つ。


確かに漫画とかでよく見る光景ではあるけど2割って……もう当たりくじでもなんでもないじゃん。
ただの告白大会じゃん。


でも、それでか。なんかどのクラスのテント内もやけに騒めき立ってるのは。



そんなことを思っていると、一年生の男子がぞろぞろ出てきて、どこか気怠げに走順に並ぶ八神くんを見つけて、咄嗟に目をそらす。

…なにしてんの、あたし。別に目があったわけでもないのに。



そんなあたしに理彩は、「走る準備しとかないとね」なんて笑う。