【完】金曜日は、八神くんのモノ





すぐに俯いて黙ると、新堂くんが笑って、あたしの頭に手を乗せた。


「……!!」

「じゃあね、柊。俺 呼ばれてるの忘れてたからそろそろ行く」


「えっあ、う、うん…。行ってらっしゃい……!」


ヒラヒラと手を振って、行き場のなくなったそれをだらんと下ろした。


……やっぱり、なんかおかしい。


だって、以前のあたしなら、こんなシチュエーション、きっとすごく喜んだはずなのに。


嬉しい。嬉しい、けど。

それ以上に困惑してるの。


「…………」

なんでこんな後ろめたい気分になってるんだろう。
すごく…複雑な、気持ちだわ。


ふぅ、と息を吐いた時。


バッとテントが開いて、



「真琴ー!見た?1位!!!」

「…!!
理彩、お疲れ。見てたよ。すごかった……なんか、色々と」


「へっへーん!
でしょ?頑張ったんだから」


暑い。
早急にどいて隣の椅子に座ってほしい。

ドヤ顔を決める理彩があたしに抱きついたまま言う。



「次、あれだね。常連くんの…」

「あー、借り物競争??
これで午前のプログラム終わりだっけ」



言って、ふと気づく。

呼ばれてたって…それなら、お昼休みにでも………



「っ……」


そうか、なるほど。
あたしが、変に緊張してたから……。



「?真琴、どうしたの?」
「…なんでもない………」



顔を覗き込む理彩に、首を振る。

また、あつい。



新堂くんの優しさに気づいて、なんだか非常に申し訳なく思った。