【完】金曜日は、八神くんのモノ






まるで忍者のような動きで逃げまくる理彩を眺めて、自然と笑みがこぼれる。


「……柊」

「うん?…っ」


パッと視線を移すと、そこには割と真剣な顔の新堂くん。

途端に心拍が乱れる。


歓声なんて聞こえないくらい、ここだけ静かだ。


「あのさ、柊。
…リレー、本当はどっち応援したいって思ってる?」

「………」



『どっち』って…。それは、紛れもなく新堂くんか八神くんのことで。

探るような視線に、ドキドキと胸が鳴って、背に汗が滲む。



なんで、そんなこと聞くの?


「……新堂くんに、決まってる………」

呟くと、彼の顔が綻んだ。


それにまた、ドキッとする。



……なんで?なんで、なんで??

思ってることを言っただけなのに、なんでこんなにモヤモヤしてるんだろう。

八重歯を見せて笑う彼が頭の端でチラついて、フルフルと首を振った。



なんで?なんか、おかしい。


俯くと、彼の手がそっとあたしの手に触れる。