そう思いつつ見ていると、不意に八神くんがこっちを向いて、
「っせんぱーい!おはようございます!!」
ブンブンと手を振って、駆け寄ってくる。
「おはよ、八神くん。なんか…元気だね?」
見えない尻尾がパタパタしてるよ。
にこりと頬を上げると、八神くんは「そりゃ、先輩に応援してもらえるし」と八重歯を見せて笑う。
…不覚にも、どきってした。
なんなの、この間から、そればっかり。
どうせ興味本位でくっついてくるだけのくせに。
好きでもなんでもないくせに。
勘違い、しそうになる。
「あ、そういえば先輩。
今日はゆり先生外に出るらしいですね」
「っ…」
珍しいですよね〜、と笑う八神くんに、咄嗟に俯く。
…なんだ、やっぱり、仲良いんじゃん。
何が『知り合い程度』よ。
嘘つき。
「ふーん、そんなに仲いいんだ、先生と。」
「……、先輩、なんか不機嫌です??」
首を傾げて覗き込んでくる彼の視線から逃げる。
その一部始終を見ていた理彩が、フッと笑った。
「今日も今日とて素直じゃないねぇ」
「うるさいよ理彩。
…ほら、八神くんも!いいからさっさとテントに戻って?
開会式、始まっちゃうよ」
理彩を睨みつつ八神くんの背中をグイグイと押せば、彼は渋々といった感じでテントへと戻っていった。
ふぅ、とため息を吐いて、空を仰ぐ。
雲ひとつない青が、目に眩しい。
今日は、憂鬱な憂鬱な、体育祭の日。



