「誰、って……」
そんなの、決まってる。
そんな今更なこと聞いて、何になるの。
「新堂くんに、決まって……ーー」
言いかけた唇が、半開きのまま動かない。
……あたし今、誰のこと考えた?
確かに新堂くんのことは出てきた。
出てきた、けど。
それより前に、一瞬何か、よぎらなかった??
彼より先に、浮かんだのは誰?
「……っ、」
違う、違う、違う。
これは、あれだ。
いつも一緒に帰ってるから。習慣だから、思い出してしまっただけ。
だから、違う。
「…新堂くんだよ」
一回唇を噛んでから、言葉を押し出す。
理彩との上履き歩幅が一瞬ずれて、心臓がなぜかどきりとした。
「………ふーん…つまんないのー」
「つまんないの、って逆に理彩はあたしの口から誰が出てくると思ってたの?」
「例の常連くん」
「……!、…それだけは、絶対ない」
「えーなにその断固否定〜」
…まただ。また、ドキってした。
彼は本当に厄介だ。
いてもいなくても、心臓に悪い。



