「やっぱり真琴は鈍感極めきってるから、あの常連くんと距離置くのはオススメしないわー」
「は?なに、唐突に」
まあ弾幕の大部分は塗れたかな、と片付けを済ませ、鞄を肩にかけるあたしに、理彩がしれっとして言う。
「だって真琴ったら、全然気づきそうにないし?このままだと溝深めたまま終わるでしょ。
あ、真琴が一方的にモヤモヤしてるだけか。」
「う、うるさいな。
別にモヤモヤなんてして……
…して、るけど。
でもヤキモチの類じゃないってこの間からずっと言ってるじゃん」
ほんのり薄暗くなった廊下に、声と足音が響く。
時間が余ったなら図書委員の仕事もしようかな、なんて思っていたけど…。
18時30分を示す時計にため息が漏れる。
図書室を閉めてから1時間経つわけだし、もう残ってるわけないよね。
「あーあ、残念。…一緒に、帰りたかったのに………」
ぽつりとこぼすと、理彩がひょこっと顔を覗き込む。
「それ、誰と?」



