「…………………マァ、順調デスヨー」
「なんで片言?!」
いやー新堂くん。鋭いツッコミありがとう。
でも、だって体育祭って嫌いなんだもん。
あんな暑い日にわざわざ外に出て汗を掻く意味がわからない。
もう『熱中症になってくださいね』とでも言わんばかりじゃないの。
そんなことなら、新堂くんと図書室で過ごすこの時間を増やしてほしいわ。
「はぁ……」
あーあ、憂鬱だなぁ。
せめて『1人ひとつは競技に出ること』っていうあれをなくしてほしい。
「真琴ちゃんは運動苦手だものね〜。
じゃあ渉くんは?何か出るの??」
「え、俺ですか?
えーと…、あ。リレー出ますよ。」
リレー!!流石 新堂くん。確かに足速かったしね。
わぁあ、今から楽しみだなー!
なんて思うと同時に、ふと考える。
……奴は、なにに出るんだろう。
別にそんなに気になるわけでもないけど、ここ以外での八神くんの、同学に見せる顔っていうのをあたしは知らないわけで。
って、あたし本当に彼のことなにも知らないな。
「柊?」
ぼーっとしていたあたしの顔を、新堂くんが心配そうに覗き込む。
「あっ、えっ、だ、大丈夫。
図書委員なのにこんなに喋ってちゃかっこつかないし、そろそろ仕事もしよっか。」
にこりと笑って、厚紙にポップのデザインを軽く滑らせた。
まあ、あいつには来週にでも聞けばいいかな。



