【完】金曜日は、八神くんのモノ







「…あ、ありがと、新堂くん。」

慌てて彼の隣に並んで、笑ってみせる。


「お礼とかいらないよ、柊がナンパされてんの見てただ俺が焦っただけだし」

「え」

「それより、それ、洋服?」


ナチュラルに話題を逸らされ、「それってどういう意味?」とも聞かずに、言葉に詰まる。

罪悪感から、紙袋を背中に隠して、曖昧に頷いた。


「ま、まぁ、そんな感じ…かな。
新堂くんはもう用事済んだの?」

その綺麗な手にぶら下げられた袋をチラリと見る。



「うん。買いたい本買えたし、満足だよ。

っと、そういえば柊って、住んでるのここの近くだったっけ?」

「え?…ううん。ここから数駅先の……」

「じゃあ送るよ」

「!?」


え、え。送る?!新堂くんが!?誰を??

…あたしを!??


「えっいや、そんな、いいよ、もう暗いし、迷惑でしょ?」

しどろもどろになるあたしの手を強引に取った新堂くんが、ふわりと笑う。


「全然迷惑じゃないし、暗くても俺男だから平気だし。
…逆にこんな暗い中を女の子1人で帰らせる方が、俺としては嫌だな」



う…。

ずるい、新堂くん。そんな風に微笑まれたら、断れるわけ、ないじゃんか。


「わ、わかった…。じゃあ、よろしくお願いします……」



キュ、と握られた手に力を込めると、新堂くんはまた笑って、歩くスピードを遅めた。


よかった、まだ新堂くんといられる。


彼に気づかれないように、そっと頬を緩めた。




普段はウザいだけのあいつにも、今日はちょっとだけ、感謝、…かもね。