え?いやいや、ありえないから。普通にナイから。


「あのね、八神くん。10000歩ぐらい譲って一緒に帰ってくれるのは仕方な〜〜〜く!認めてあげましょう。
でもさ、手は離していただけません?」

「いやでぇす♡」


……ほら。こんなやつだよ。こんなクソうぜえやつだよ。
そんな人に何乙女みたいな感情抱いちゃってんの、自分。

そもそもさ、あたしが好きなのって新堂くんじゃん?
そうだよ、新堂くんなんだよ。


うんうんと1人頷いていると、八神くんが、「あ!でも……」と何か企んだように微笑む。




「先輩が明日デートしてくれるんなら、手、離してあげてもいいですよ。」



……………




……………






……はぁ???


「何バカなこと言ってんの、で、デートとか、し、しないし。」


「え、じゃあ、手離しませんよ。学校の人に見られるのも時間の問題ですね?」

天使の笑顔で悪魔のような発言をする八神くんの顔を信じられない気持ちでまじまじと見つめた時、あたしと同じ服を着た女子2人組が、談笑しながら八神くんの後ろを通り過ぎていった。




途端、サッと背筋が凍る。

まずいよ、確か、新堂くんも駅前よく使うって言って………




最悪の事態が頭をよぎり、あたしは決心した。

…くそう、仕方がない。









「……わかった、デートするから手を離そうか……」




その後、キラキラと目を輝かせた八神くんが「わぁーいっ!!!」繋がれた手をブンブンと振り回したのは、言うまでもないだろう……。