もう聞き慣れてしまった声に顔を上げると、そこには予想通りの人物が、ヘラヘラと突っ立っていた。
「先輩、貸出許可下さい」
「はー………い…」
……また?
差し出された本を見て、流石に印を押す手が止まる。
そぉっと彼の様子を伺うと、「何か変ですか?」とでも言いたげに首を傾げられた。
…いやいや、あのさ。
この本、先週も借りてたよね?!
そう思いつつもなんとか印を押すと、彼は「ありがとうございまーす」とニコニコヘラヘラして、図書室を出て行った。
パソコンに映る本の貸出データの、彼が借りて行った本の欄に『9/7』と打ち込んで、あたしはため息を一つ。
「本当、なんなのよ、アイツは……」



