だって、その本は。


「…どうして、2冊あるんですか?」

「!」



目を見開いた先生は、ふ、と目を伏せて笑う。


「あーあ、バレちゃった〜。反射神経には自信あったんだけどなぁ〜」


…そんなおっとりした喋り方で言われても。

先生は、後ろ手に持っていた本を「じゃじゃ〜ん」なんてふわふわした効果音と共に、あたしの前へと出す。



「……ゆり先生、これって、どういうことなんですか」


先生が掲げた本…それはやっぱりあたしの見間違いなんかじゃなくて、

八神くんが毎週借りている本と全く同じもの。



どうして、2冊もあるの?
まさか、発注ミス的ななにかなのかしら。

でも、それだとしたらそれを差し替える先生の行動が理解できない。


まさか、カバーだけが同じで、中身は別物??
それだとしたら、カバーを変える意味は何?


様々な疑問が湧き上がるあたしに、ゆり先生はその長い髪を揺らして笑う。

そのままあたしの横を通り過ぎて、長机の前の椅子に座って、あたしを手招いた。


「本当は、八神くんには口止めされてたんだけどなぁ〜。バレちゃったなら、もういっか。
はい、コレ。あげる。」

「えっ」