あたしが今いる本棚からは、八神くんの本がある本棚は見えない。
だからゆり先生が今何をしているのかもわからない。…まぁ、ただ本を棚に戻しているだけなのだろうけど。
…でも、八神くんの本と、ゆり先生。
これって、ただの偶然なの??
なんとなく気になって、立ち上がって先生がいる本棚の影まで移動する。
別に、こんなにコソコソする必要もないんだけどね。
そっと覗いたとき、ゆり先生はあの本を本棚へと差し込んでいた。
……なんだ、やっぱり、ただの偶然だったのね。
視線を外そうとした時、先生が一冊の本を取り出す。
「……え??」
「だ、誰?!」
思わず溢れた声に、先生が振り向く。
「あ、……」
バチリと目があって、ギク、と体が強張った。
「な、なんだ…真琴ちゃんか〜。誰かと思ってびっくりしちゃった。なぁに?サボり〜?」
話し方はいつも通りだけど、咄嗟に後ろ手に隠した本…。
「先生、その本、見せてください」
「………どうして?」